レビューとメモ

見た展示や動画などの一言レビューとかメモとか覚え書きのようなものです。

思想地図βvol.4-2「福島第一原発観光地化計画」

 

http://fukuichikankoproject.jp/

 

 

読んだ  ☆☆☆

 

 

思いのほか、面白かった。

 

 

正直、パッと見には前作β4-1の「チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド」の方が面白いかな?と思ってたのだが、こっちの方が全然おもしろかった。途中、飛ばした所もあったが、一気に読んでしまった。

 

 

基本的に、チェルノブイリダークツーリズムガイドの方は、現実の事なのに、あまり知られてない事象を編纂したものだとしたら(というか、それがガイド本って事か)、こっちは色々な知見を編纂する一つのキーワードとして、「福島第一原発観光地化計画」が中心にあるような感じだった。つまりは「未来」の物語をみんなで考えてる感じ。内容より「考え方」の面で、特に面白いと思った。なんというか、適切な言い方かどうか分からないが、ある種のワクワク感がある。

 

 

とはいえ、序盤は、いま現実に起こってる事の話なので、いろいろ知らない事を知れる側面も強い。

 

 

その中で読み進めて行くと、後半に行くに従って「絵空事」的なことが増えて、個人的には、あれ?と思う部分が増えた。そこにちょっと戸惑いはあるかも。

 

 

特に、正直、サイトゼロの話までは良いと思ったが、ふくしまゲートヴィレッジの話は、あんまりピンと来なかった。開沼さんの2つの提案は、なるほどと思ったが、全体的には、なんで、こういう施設を創るのか、話がよく分からなかった。

 

 

ただ、そのあとの建築をめぐる鼎談を読んだら、色々なるほどと思う所も多かった。というか、この鼎談で話されてる事は、福島のみならず、今後の社会をどうするか?みたいな事なので、そのへんに一番ピンと来たというのはあるのかもしれない。正直、本の中で、ここが一番面白かったし。これを読んだ後に、戻って、いろいろ読み返すと、なるほど。そういう意図なのか。と思う部分もあるようには思う。というあとに宇宙の話が来る構成も凄いかも。

 

 

全体的な構成としては、「あとがき」で「文学」の話が出て来る通り、現在(またはちょっと過去)から未来までの「物語」を読んでるような読後感もあり、そのままズバリのリアルな提言というよりは、叩き台的な側面を強くした面もあるのだろう。というより、「あとがき」を読むと、あまりにも上手くまとまってる感じがするので、これはこれでこういう話として完結してしまう気にもなる。

 

 

でも、現実の物語は現在進行形で可変していく、または、可変させられるものなので、その意味で、今後の未来に対するワクワク感もまた「現実の方に」出て来るような気もする。

 

 

現実に起こる悲劇への対処の仕方として、ワクワク感が適切か否かというのはまた別の(主に倫理的な?)問題にはなると思うけれど、ひとまず、こういう提言自体が面白いか否か、気に入るか気に入らないかという、そういう単純な「軽薄な心」は喚起されたかもしれない。

 

 

まあ、もっとも、単に本を読んだだけなので、あとちょっとしたら、かなり忘れてしまうような気もするけれども。(でも、本は、雑誌っぽいつくりなので、細切れに読みやすいし。まだ読んでない所もあるので、ひとまず、あとでまた色々読んでみると思います。)