レビューとメモ

見た展示や動画などの一言レビューとかメモとか覚え書きのようなものです。

車田メソッド

 

 ヒロアカにハマりすぎて、なんとなくヒロアカの感想を書いておこうと思ったが、割とヴィランのあり方が最新系だと思うので、先行作品やMCUなどを見返したり、遡ってまとまらない。

 

 という中、車田正美の作ったヒットの方程式=「車田メソッド」について考えてみたので単独で載せてみる。

 

 ちなみに、内容は特に「リングにかけろ」に関してだけど、「リンかけ」に関しては、自分はリアルタイムで読んでいたわけではないが、その余波が残ってるジャンプは読んでいたので、なんとなく流れが分かると言った程度である。なので、間違ってる部分もあるかもしれないが、そこはご容赦願いたい。とりあえずメモ的に載せるが後で加筆修正するかも。(先行するアストロ球団とか本宮ひろしとかには詳しくないので、読んだら、結構こっちが先か!とかなりそう)

 

 以下、「リンかけ」のモデルを重要な部分だけ抜き出して、個別に見ていく。重要な手法のオンパレードと言えるだろう。

 

・必殺技

 「リングにかけろ」で最も画期的だったのは必殺技の描き方であろう。元々、リンかけは「あしたのジョー」のようなリアル寄りのボクシング漫画としてはじまっているが、途中からブーメランフックやギャラクティカマグナムのようなキャッチーな必殺技が繰り出されて、漫画におけるリアリティの位相を変えて行く。

 

 最初から必殺技を繰り出すヒーローものではなく、スポーツ漫画として描かれた等身大の人間が必殺技に到る事により、必殺技をより身近なものとして感じさせたのが、この作品の一番凄いところではないか。現在の子供たちが「水の呼吸」や「火の呼吸」を真似るように当時の子供たちは「ギャラクティカマグナム」を真似ていたはずだ(子供の頃にやってた朧げな記憶はある)。

 

 また大ゴマに大文字で必殺技を描く演出を繰り返した事も重要な点だろう。というか、それが一番重要な点かもしれない(実際にこれが車田正美の発明なのかどうかは調べてないので分からないが、車田漫画がこの演出の代名詞である事は間違い無いだろう)

 

・最強の敵が最強の味方に

 リンかけにおいて、重要な要素にこれもある。竜児と剣崎である。主人公がちょっと目上な感じの強者に立ち向かい、ライバル(敵)となり、後に味方になる。

 

 「王道」といえば、このパターンがまず思い浮かぶ感じだが、その一番分かりやすい例が竜児と剣崎の関係性と言える。聖闘士星矢も正にこの方式で仲間を増やしていくが、剣崎にあたるキャラクターは意外といない。キン肉マンでは、テリーマンがこれに近いと思うが、全然違うと言えば、違う。意外とピタッと該当するものはないのかも。

 

 とはいえ、聖闘士星矢と同時期のドラゴンボールにおいては、最初は悟空とヤムチャからはじまり、天津飯、ピッコロ、ベジータなど、多段階方式でこの構成をやっていて、1作品で、この「王道パターン」を定着させてしまったと言っても良いかもしれない。

 

 現在では、意外と鬼滅もワンピもこの構図をやってない事から、普遍的な構図というよりは、オプションに近い構図になっていると思う。というよりもギャグ漫画でこのメソッドを茶化す事が多くなったりしていて、もはや取り扱いが難しいとも言える。デクとかっちゃんは若干これに近いかもしれない。

 


・冴えない奴が頑張る

 石松である。但し、ジャンプの歴史の中で言えば、ダイの大冒険のポップが一番の代表格だろう。ドラゴンボールでいえば、クリリンキャプテン翼でいえば、石崎。ワンピでいえば、ウソップ。幽遊白書でいえば、桑原になる。

 

 このキャラは市井のキャラが何者かになるので、主人公以上に感情移入がしやすく主人公属性があるとも言えるが、意外とこれをど真ん中で主人公にすると失敗する気がする。というより、デザインが冴えないのが多いのであまり人気キャラにならないのがネックではある。まあ、最終的に1番(チャンピオン)になれないから仕方ないのだが、その意味においてもポップは本当に良くできている。

 


・美形のナンバーツー(スリー)

 河合である。志那虎もそうと言って良いかもしれない。聖闘士星矢では、氷河と紫龍であり、もはや、90年代以降のマンガ、アニメはこれを常識的なキャラ構成としていると言っても過言ではない。そもそも聖闘士星矢の段階で、主人公よりこちらの方が人気が出る事がおそらく(車田正美には)わかっていたはずなので、上の2つのメソッドを早々に退場させて、こちらに主戦場を移した感がある。

 

 聖闘士星矢以降も、幽遊白書の蔵馬と飛影、スラムダンクの流川と三井、ワンピースのゾロとサンジなど、枚挙にいとまがない程、例があり、ヒロアカの爆豪と轟ももちろんこのメソッドが適用されていると言っても良いだろう。鬼滅はちょっと変奏的だが、まあ、2人、主要な仲間がいるというのは同じだ。多分、主人公よりナンバーツーの方がかっこいいのは、今後も不変の王道だろう。と言いたいところだが、意外にもドラゴンボールが微妙だ。一応、ベジータの方がかっこいい気もしないでもないけども厳密にはこのメソッドと違う気がする。

 

(ちなみに、このメソッドは車田以前にアストロ球団の方が先らしい。また、石森章太郎がどうだったとか古典がどうだったとかも意見の分かれる所ではあるだろう。ただ、現在までの流れでいえば、やはり、車田→同人人気という流れが大きいのではないか。うっすらした記憶の中では風魔の小次郎も美形で結構な人気だった気がする)


・トーナメントとチーム戦

 リンかけのもう一つ重要な点はトーナメント戦にある。そもそもがボクシング漫画なので、トーナメントはそれほど意識せずにやってたはずだが、これが大当たりして、その後の展開はトーナメント偏重になり、後半はキャラクターを活かすために団体戦にするなど意図的にやっていたはずだ。団体戦は大体5人なのだが、ジャンプでバスケ漫画が二回大ヒットしてるのも団体戦と同じ「5人」という要素が丁度いいからではないか。

 

 しかし、トーナメントによって、一人ひとりのキャラ立てをした上で仲間を作り、新たな強敵チームと戦う展開は90年代ぐらいまでの定番であるが、以降はスポーツ漫画以外では、あまり見受けられなくなっていく。これは、現実の少年の生活が部活よりゲーム世界寄りになってきているというのもあるだろうが、単にドラゴンボール天下一武道会でやり尽くしてしまってトーナメントがネタ的になってしまった事も一因かもしれない。(ヒロアカのような学園ものだとやってるが割と短かったし)


・クエストバトル(タワーバトル)

 阿修羅編である。影道編もか。限定された場所で、敵が順番に待ってて、それをやっつけていくというメソッドだが、当時はそんなに人気ないパートだったと思うし。ドラゴンボールでもタワーバトルはそんなに人気なかったと思うが、現在では、こちらの方が主流になっていると感じる。

 

 作者が最も苦労したパートだったらしいが、振り返ると結構、重要だったのではないか。聖闘士星矢ではメインの黄金聖闘士編でこの方式を使ってるし。現在でも、ワンピのインペルダウン編(というか、航海のログ自体そうか)、鬼滅の最終決戦が正にこれの変奏だ。と言っても、この方式がリンかけが最初だったかは知らないが、ジャンプ内において、この方式が定着した事に車田マンガの力は大きい気はする。

 

・仲間が死んで生き返る

 これが正にリンかけ的展開の醍醐味だろう。演出的にいえば、「仲間が死んで強くなる」もこの派生だと思われるが、以後、ドラゴンボールがこれを方程式のように使い出し、ジャンプの定番となり、これもギャグで茶化されるぐらいの王道手法となる。

 

 こうしてみると、ドラゴンボールは車田メソッドを喰らい尽くして、完全に消費したマンガだと言っても良いかもしれない。おそらくドラゴンボール初期のライバルが聖闘士星矢だったので意識したのか、単にその頃の読者がこういう展開にまだ新鮮味を感じていたのか、まあ、時代性もあったのだろう。(ちなみにパワーリスト外すと強くなるとかもリンかけでやってる。)


 以上。個別に見れば、他の先行事例も見つかるんだろうけど、これらを網羅して「ジャンプ漫画」として定形化させたのは「リンかけ」が一番大きいのではないかと。

 

 というか、リンかけの始まり方と途中の展開の仕方のあまりの違いを見ると、完全に当時の読者の興味に合わせて展開を創っていったとしか思えないし。それはドラゴンボールもそうなのだが、結局、展開を読者に委ねるというジャンプ方式により、こういう王道が生み出されていったのだと思う。

 

 ちなみに、ドラゴンボール以降、というか、ワンピース以降は割とメインの法則が違ってきてるとは思うが、そんな話はまたあとでするかも(というか、最初に書いたがヒロアカを軸にヒーローとヴィランの話をちまちま書いているので、後で色々小出しのメモを出すかも)