レビューとメモ

見た展示や動画などの一言レビューとかメモとか覚え書きのようなものです。

ヴィランの成長

 

 前回の続き

 

alta.hatenablog.com

 

 ヴィランが成長して巨悪になっていく描写というのは意外と難しいのではないかと思う。というより、意外とパッと思いつかない。ヒロアカはここが巧いのではないか。

 


 そもそもヴィランは最初から強くないと怖さがないので敵がショボく感じられる所がある。要は初見でナメられるとそこから挽回するのが難しい。実際、死柄木は最初の頃はとてもラスボスになるとは思えないほど、しょぼい。まあ、ヒロアカの構造上、ラスボスになるんだろうなーという感じではあったけど、これじゃなぁという感じも否めなかった。

 

 

 それに対して、ヒーローは一緒に成長する事により感情移入しやすくなるので弱い設定にした方が共感は得やすい。なので、デクはしょぼくても問題ないという構造がある。これは普遍だ。

 


 ヴィランの成長をクリアするために、ヒロアカにおいて、そもそも死柄木はデクよりもかなり強い所から始めておいてライバル関係を煽るというのは正に竜児と剣崎からなる伝統の構図だが、このへんは学園者らしくスポーツものの構造を上手く取り入れてるのではないかと思う。

 

 ただ、それだけだと本来のライバルになるべきはデクとかっちゃんになってしまうので(というか、それはそれでライバルだが)、死柄木は弱い(キャラとして)。

 

 

 ヒロアカがこれより進んでいるのは、ヒーローの側もヴィランの側も両方に最強の味方(メンター)がいる二重構造にして、強さの均衡を作り出している所にある。ちなみに付け加えておくと、ヒロアカはこの二項対立の多重構造が特徴の漫画ではないかと思う。

 


 それはともかく、これにより、死柄木の巨悪である事の根拠はAFOの方に寄せながら、一旦はオールマイトに倒させてAFOを退場させ、死柄木をヴィランの主役にして、ラスボス化への道を作っているところがヒロアカの巧い所だろう。ただ、巧いと言っても、この時点ではまだ死柄木はAFOに及ばない端役感は否めない。そこからここまでの強キャラ感に至らせた所がこの作品の描写の一番巧い所ではないか。もちろん、画力もある。

 

 ちなみに、「ここまでの」というのが何処までかというのは、アニメ6期(あるいはそれ以降)で描かれていくのではないかと思うので、今はまだ詳細は書かない事とする。一応、ネタバレはアニメの範囲ぐらいまでにする方向で(無意識にやってたらすいません)。