レビューとメモ

見た展示や動画などの一言レビューとかメモとか覚え書きのようなものです。

アメリカから神話へ


 現在、ヒロアカが盛り上がってる所だが、なかなか文章を書く暇がない。というわけでメモ的に。


 ヒロアカといえば、作中ヒーローの象徴であるオールマイトが完全に日本から見たアメリカのヒーローそのものである。

 

 基本的に日本の戦後漫画は第二次世界大戦(太平洋戦争)の影響が色濃く、アメリカからの影響にかなりねじれがあるのが特徴ではないかと思われる。

 

 日本のヒーローものでアメリカは敵として描かれる事が多いが、味方だったり、そもそも作劇の方法に影響を受けてたり色々である。この辺は多くの論考が出ているので多くは書かないが、前提として一応、語っておきたい。その上で途中から「リンかけ」のような神話的要素が強くなり、そちらがメインストリームになっていくのではないかというのが今回の骨子だ。

 

 神話的要素は、リンかけの敵が正に(国内の相手を経て以降)アメリカにはじまり、ギリシア神話に至るのだが、この直後のキン肉マンアメリカのテリーマンからはじまり、悪魔超人などの神話的要素に移っていく事から、この頃のトレンドなのではないかと思う。

 

 但し、神話的要素と言って、直感的に思い浮かぶのはサイボーグ009である。ちゃんと調べたわけではないが、流れを把握するために日本の主要なヒーローものとそれに類似する作品の年代を以下に列挙してみる。本当はこれに敵の属性も調べたかったが、そちらはまた後で。年代的に神話要素はマイティ・ソーの影響もあるのかもしれない。

 


【スーパーマン】1938

バットマン】1939

キャプテンアメリカ】 1941

マイティ・ソー】 1962

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鉄腕アトム】1951(アトム大使

赤胴鈴之助】1954

【鉄人28号】1956

月光仮面】1957

サイボーグ009】1964 天使編 1969

ウルトラマン】 1966

タイガーマスク】 1968

ドラえもん】 1969

仮面ライダー】1971

ガッチャマン】1972

マジンガーZ】 1972

デビルマン】1972

宇宙戦艦ヤマト】 1974

【ゴレンジャー】1975

タイムボカン】1975

リングにかけろ】 1977

キン肉マン】 1979

ガンダム】1979

 

 長いので、とりあえずガンダムキン肉マンまで。あとは雑感を。


 「ガンダム」は放映当時の年代というより、リバイバルを経て徐々に相対的な戦闘の価値観が日本の作品に浸透していくきっかけになったのではないかと思われる。漫画で言えば、「デビルマン」の後に与える影響も大きいかもしれない(デビルマンは戦闘の構図は単純なヒーローものだが、漫画版は善悪が混合し、最終的に必ずしも人間側=善とならず相対化されていく)。


 「リンかけ」や「キン肉マン」は、まだ戦闘に相対的な所は見られず、単純な善悪論みたいなのが機能しているのではないかと思われる。特にキン肉マンはプロレスが元なのでヒールが明確に存在し、分かりやすい構図を作り出している。無論、のちに超人ごとに属性がつき戦闘が相対化していくが、それは本格的には週プレの新バージョンが始まってからの話であろう。ただ、キン肉マンは絵的に永井豪の影響が見られるので、意外と最初から相対的な作品をやりたかった可能性もある(ジャンプメソッドとはいえ、すぐ敵が仲間になるし)


 感覚的にいえば、90年代ぐらいからAKIRAナウシカ(漫画版)、寄生獣などの当時のクリエイター受けする作品と共に相対的な価値観が広まっていき、NARUTOぐらいの時代においては、単純な善悪論は消え、そちらがスタンダードな価値観になっているのではないかと思われる。

 

 90年代は、SDガンダムなどをきっかけにガンダム熱が再燃し、富野ガンダムの復活とともに他の作家によるガンダムが枝分かれして、ガンダムの解釈、再解釈が外に広まって相対的価値観の影響力が強まっていった時期とも言えるだろう。まあ、時代的に冷戦が終わって、話が相対化していったのもあるとは思うけど。とはいえ、90年代のメインストリームであるドラゴンボールはまだ単純な善悪の分け方が機能しているのではないか。


 ちなみに自分が書こうとしてる「ヒーローとヴィラン」の骨子は「鬼滅」と「ヒロアカ」はそのガンダム的な相対的価値観を超えて、再び善悪をはっきり分けた所に現在の(というか、SAKAMOTO以前としても一昔前の)ジャンプ漫画のポイントがあるのではないか?という話となる(予定)。

 

 特に「鬼滅」は完全に敵と味方を分ける事に成功しているのにも関わらず、寄生獣的な結論に着地しているので、結構すごいなと思った。で、これはヒロアカの構図を参考にしたのではないかともちょっと思った次第で、その辺をあとで詳細に見ていきたい。(ヒロアカは描写がAKIRAっぽく展開もAKIRA的世界観に徐々に近づいているが、着地点は、多分、もっとちゃんとしたヒーロー物っぽくなるのだろう。多分。もはや分からないけど)


 ついでに言うと、「NARUTO」には漫画版ナウシカの影響が見受けられる。ただ、漫画版ナウシカは「もののけ姫」に主題が継承されてる事もあり、0年代以降の日本の創作にかなり広範に影響を与えてるのではないかと思われるので、単に時代性と言っても良いかもしれない。


 あと、こうして見ると「赤胴鈴之助」(和物)と「月光仮面」(アメリカンヒーローのアレンジ)の関係は、ちょっと「鬼滅」と「ヒロアカ」の関係に似ているのかもしれない。日本の創作のベーススタイルかも。

 

(ほぼほぼ直感のメモ)