チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1
- 作者: 東浩紀,津田大介,開沼博,速水健朗,井出明,新津保建秀
- 出版社/メーカー: ゲンロン
- 発売日: 2013/07/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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かなり奇妙な本ではある ☆☆☆
この時期、福島からの連想でチェルノブイリまでは分かるが、その後にダークツーリズム・ガイドと続く。ガイド本である。無論、読んだ感想はガイド本とは、ちょっと違う事になるのだが。
そして、ダークツーリズムというのも、よく分からない。旅行である事は分かるが、チェルノブイリと旅行の間にすらイメージの飛躍があり、謎である。
それをつなぐのがダークツーリズムという言葉なのだろうが、本自体は、アニメのムック本のような体裁でダークなイメージではない。ちなみに、ダークツーリズムというのは、悲劇の起こった地域をまわって哀しみを共有しようというような観光の事だそうだ。
写真も色が薄くあっさり目の写真が続いていて、チェルノブイリにまつわる、おどろおどろしいイメージはない。
その影響か、ガイド本的なつくり故か、読んだ印象も割りとあっさり目に感じるが、個々の文章自体は、熱く感じられるものが多く、そして、内容もハードだ。
出色なのは、ウクライナの人達のインタビューだろう。それぞれの立場で語られた言葉は、イデオロギー的に括られがちな原発の問題に多様な視点がもたらされているように感じる。
結局、この本に関しては「この視点(観光地化しているチェルノブイリの現在)」の発見にこそ、最大の意味があり、それを極力、邪魔しないような本のつくりになってるかなとは思う。
ちなみに、この本は思想地図βという思想本の(今の所の)最新号(4-1)で、それを知る人には、そんなに飛躍した本に感じられるわけではないだろう。
そういった情報があれば、ある種の流れの中で、本を捉える事が出来る(自分もこの本の発売元のゲンロンの会員なので自動的に送られて来た)が、出来れば、むしろ、もっと偶然の出会いで、この本に出会いたかったなという気持ちが無くもない。ある種、ネタバレな状態で本を読んでる気もするので。
そして、次の思想地図βは、「福島第一原発観光地化計画」に続くそうだ。ここまで来れば、この本の意図は明確に汲み取れるのだろう。そちらと読み比べる日も楽しみにしている。