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最高だった。 ☆☆☆☆☆
2006年の展覧会なので、かなり古い記憶が頼りになるが、丁度、美術出版社から奈良美智完全読本が出たところで記憶を頼りに。
A to Z展は、自分が見た展覧会の中では最高峰のもので、丁度、ドイツ旅行で美術館巡りなどをしたあとに見た事もあって、かなり自分が美術方面への興味に傾倒して行った初期に見たものだ。
それ故、知識が薄い中で見たのだが、行ったのは、たまたまで、たまたま周囲に見た人が多く、評判が良かったのと、たまたま、丁度、暇があったのと、たまたま、丁度、パレットクラブというイラスト学校に通っていて、いろいろ勉強熱心だった事が相まってふらっと行ってみたという記憶がある。どちらかというと、旅をしたくて行っただけだった。
しかし、見たら、これが想像を超えるほど面白く、美術というジャンルはこんな面白い事をやってるのか!?と純粋に思ったものだ。以来、これを明確に超えたと言える展覧会に出会った事がないので、この面白さをジャンルそのものに当てはめたのは単純だったかもしれないが、知識のない時の美術に対する出会い方としては良い出会いであったと言う事が出来るだろう(それ以前も結構、頻繁に美術展に行く方ではあったが今程ではなかった)
このA to Z展の特徴だが、これは、奈良美智という一人の作家の仕事を中心に、色々な作家の作品が配置され、乱立する小屋が一つの遊園地のような回遊性を創っている所にある。
特筆すべきは、中心にある奈良の描く少女や犬のアイコンであり、そのアイコンの存在によって展覧会の敷居が下げられ間口が広がって行くイメージが個人的にはあった。単純にキャッチーなキャラクターの存在によって、展覧会が「たのしく分かりやすいもの」とイメージづけられる所があったと思う。
これは、ある意味で自分の興味対象であるアイドル文化の構造にもよく似ていて、極めて日本的なキャラクター文化の在り方の反映なのかも?という気もしなくもない。
しかし、この展覧会は、「そういうもの」を超えて、実際に展覧会を見ると、内実は豊穣で美術の奥深さを感じさせるものでもあった。キャラクター文化の在り方といっても、「キャラクターそのもの」を扱ってるのではなく、「キャラクター文化そのもの」を扱ってる重層性を感じたものだ。
特に個人的に奈良のアクリル画を初見した衝撃は凄まじく、キャラクター的なものを描いてる感じなのにこれほど絵って深みが出るものなのかと当時は単純に驚いた。
そして、それは深みだけでなく、ポップなタッチもあり、ぬいぐるみや立体造形などもあり、その表現の自由度の高さと言うか、変幻自在性にこういうものもあるのか?と固定観念をいろいろ覆される多様性がある。(まだ、ロスコやポロックなど、いま自分が好きな抽象表現主義の作品などは見た事はあっても理解できない時に見た時の感想ではある。)
おそらく、こうした衝撃を経て、単純な自分は、いま地元(群馬県東毛地区周辺)でアート活動(しかも、主にグループ展)を繰り返す日々に至ったのだが、そういう意味でも、この展覧会は想い出深く、かけがえのない忘れられない展覧会の一つになっている。
出来れば、今の知識でまた見てみたいが、それが叶わないのも、想い出の美しさに拍車をかける一旦ではあるのかもしれない。そういう「展覧会」という儚い形態と、しかし、中心の絵は残るという永続性のようなバランスも美術というジャンルのまた良さかなとも思う(まあ、これは音楽におけるライブと音盤の関係にも似ていると思うが)。