レビューとメモ

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8マン


 ヒーローものといえば、石森章太郎だが、その前に日本の創世記のヒーローといえば、「8マン」(1963)である。


 8マンは、平井和正原作で桑田次郎(二郎)作画の漫画だが、桑田次郎は原作ものとはいえ、「月光仮面」の作画もやっていて、ヒーローものでは馴染みが深い作家だろう。ヒット作「まぼろし探偵」(1957)で探偵をやっているところから、探偵ものにも馴染みが深い作家でもある。というより、鉄人も少年探偵である所からして、この時代の探偵もの人気は江戸川乱歩の少年探偵シリーズからの流れなのだろう。


 企画としては、マガジンによる、鉄腕アトム、鉄人28号に対抗するための企画らしいが、この中で言えば、8マンは少し大人な話で作画も少し劇画調。絵柄にアトムっぽさもあるし、アメコミっぽさも感じるが、自分が見るに若干、白土三平の表現に近いようにも見える。特に流線の描き方には共通するものがあると思う。設定も、主人公自体が大人であり、タバコの強化剤でパワーが強化される設定になっているので、大人びた物語にする狙いがあるのだろう。


 特筆すべきは、8マンは見た目はアメリカ的なスーツヒーローだが、中身は完全なロボットだという事だ。アトムと鉄人への対抗として作られたのだから当たり前といえば当たり前だが、この辺は面白い。8マンの出自がアメリカという設定なのでアメリカ文化の影響もかなり見え隠れするが、流石、平井和正らしく敵にエスパーなども出ていて、ロボット対超能力者という異能バトルは、時代からいって、早いのではないか。


 サイボーグももちろん出てきていて、「加速装置」も出てくる。となると、今見ると、むしろ関連づけられるのは、やはり石森ヒーローだろう。特に8マンには、007とか005といった敵役が出ている所から「サイボーグ009」に多大な影響を与えたと見るのが妥当ではないか。と思って調べてみたが、意外とその件についての話は出てこない。割と最近、8マンVSサイボーグ009という漫画が描かれている事から、両方の名前で検索するとこの漫画ばかりが出てくるな。しかし、8マンと009、連載時期が微妙に重なってるので、相互の影響もあるんだろうか。


 詳しくは調べられなかったが、人からロボットへシームレスに変身する所、特殊技能がスピードである所などは、仮面ライダーや戦隊モノも含めて、石森ヒーローに多大な影響を与えたような気はする。そしてまた、平井和正は009の群像劇に影響を受けつつ「幻魔大戦」を書くらしいが、このへんの相互の影響も詳細に見ていくと面白い所なのかもしれない。


 また自分の推測だが、ヒロアカも日本のヒーローものとして、このへんのヒーローの事を少し意識してる部分があるのではないか。特に最新37巻のエピソードでは、少し漫画創世記のヒーローにオマージュを捧げてるように個人的には読めたが、どうなのだろう。いや、実際それが本当かどうかは分からないので、もしくは作者が意識してないのだとしたら、それは日本のヒーローとして必然の帰結であるという事なのかもしれないが。

 

 あと、速度の速さは日本が自動車産業が強い事と関係しているような気もしないでもない。まあ、アニメ大国である事とも関係しているかもしれないけど(動きが作れるので)