レビューとメモ

見た展示や動画などの一言レビューとかメモとか覚え書きのようなものです。

フェルメールとレンブラント展

 

www.tbs.co.jp

 

 

 良作がさくっと見られた。

 

 ☆

 

 フェルメールレンブラント展を見て来た。正確には上のリンクにある通り「フェルメールレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」と言う。タイトルはフェルメールレンブラントがメインだが、目玉は1点ずつしかない。というのは、この手の展覧会で最近ありがちな構成だが、しかし、今回は後ろの部分も重要かもしれない。カレル・ファブリティウスの作品など良い作品が多かった。 

 

 フェルメールの作品は「水差しを持つ女」だが、今まで見た中ではランクの高いものではないと思った。但し、やはり構図の妙などはうなるものがあるというか、他の作品群より「今」に適した部分がある気はする。シンプルで飽きがこない構成になっている。このへんは光学機器を用いたある種のデジタル感が今にフィットしてる部分もあるのかもしれない。

 

 レンブラントのベローナは一級品だ。素晴らしい作品だと思った。自分としては、こちらが目当てで見に行った。

 

 レンブラントの重厚感もまた今のデジタル厚塗りに近い部分があり(というか、順序が逆だが)、このへんの絵画がいま日本で人気なのは、そういう理由もあるのかもしれない。まあ、とにかく巧い絵だ。そして、迫力がある。

 

 他の作品も割合、質の高いものも多く、見ている間、ヨーロッパの美術館にいるような気分にさせてくれた。が、いかんせん入場料の割に作品数は少なくコストパフォーマンスは悪いかもしれない。とみんな思ったのか、フェルメールにしては人が少なく、じっくり見られたので、場合によっては逆にコスパよすぎ!って気分になるかもしれない。ていうか、そう思った。

 

 そういえば、2011年に放射性物質降り注ぐ中、Bunkamuraで見たフェルメールも空いててじっくり見られたなーという記憶が蘇った。というぐらい今回、空いていたのだが、今回も雪の日に見たからというのもあるだろう。

 

 もちろん、空いてるのは単に会期最初の方だからというのもあると思うので、これから混むのかもしれない。でも、単にここ数年でフェルメールが紹介されすぎて、ちょっと飽きて来た部分もあるのかもという気はしている。そろそろフェルメールレンブラントだけでなく、他の作家に焦点を充てた作品展などもやりだしそうだなーと思わなくもないぐらい今回は他の作品も良かった。

 

 

サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡

 

www.fashion-press.net

 

 

 魔法のような絵画 ☆☆☆

 

 

 話題のサイトゥオンブリーの展覧会を見てきた。紙の作品だけという事で、どうなのかなーと思っていたが、見に行ったら、素晴らしい作品の数々で非常に良かった。

 

 

 内容は、子どものラクガキのようなものを色々な画材で構成して、自在に描く。といった感じ。ただそれだけ。

 

 

 一見、単純な絵に見えるが、使ってる要素は意外と多くて、かなり構成が複雑な印象。そして、絵がほとんど完璧に決まっているように見える。これには驚く。見てて、魔法か!と思うような。

 

 

 推測だけど、たぶん描き方は単純なのだけど、蓄積の過程が複雑なのだと思う。簡単に描けそうというか、構造を知れば、簡単に似たものが描けると思うけど、これを描くのは容易ではないというか、奇跡的な感じすらする。というのも、実際に絵を描いてる人間なら分かると思うのですが、ラクガキのように描いた絵は、単純には、このようには「決まらない」ので。描きすぎたり、描き足りなかったり、構成が狂ってたり、コラージュがダサかったり。

 

 

 こういうのも、子どもが描くと、逆にわりかし素直に線が出たりして気持ちよいのだけど、それ故に匿名性が高く、理知的でもないので、流石に「作品」と呼ぶには無理がある(個人差も運もあるので、全部がそうなるとまでは言えないけど)。

 

 コラージュも教えると、教えた側の人間の意識がもろに出てしまい、それはそれで良いコラボになる時もあるけど、少し何処かが抜けてしまう。やっぱり、画面が支配されてないものになってしまい、うまく決まらない。

 

 反面、大人がラクガキをやると理知的すぎるか、理知的であるのに知識が足らないか、あざとさみたいなものが出てしまい、作品にしようとすると、うまく収まらないものが多い。特に構成とか、結構、難しくて、何処で止めればいいか、うまい収まりどころがない絵が多く、特に自動筆記みたいな手法は止まりづらいので、描きすぎてしまう事も多いはず。

 

 そういうのが、サイトゥオンブリーの絵は、かなりラクガキの良さに近く、スッと出てて、自由度を感じ、なおかつ良いあんばいに「止まってる」。とにかく「ピタッ」としてるなーと。そういう強度を感じる。

 

 結構、直したり付け足したりも多いと思うのだけど、そういうのも含めて、決まってるものが多かったなというのが一番の印象かなと。いっぱい描いた中で優れたものだけ残してるからなんだろうけど、でも、そうでもないのかなと思う部分もある。単に天才なのか?とか。

 

 例えば、線とか、塗りとか、或いは、ちょっとしたコラージュとかが、いちいち粋なので、こういうのはセンスというべきか、たぶん何らかの蓄積なんだろうけど、とにかく常人に描くのは無理だと感じる。この展覧会では、基本的に年代順に作品が置いてあるのですが、後ろの方に行くに従って絵が良くなって行ったので、そういう意味でも蓄積による絵なのかなーとは思う。そして、そこも凄い。(晩年の方が良いのは、トレンドによる作用の可能性もあるので、100年後とかにフラットに見たら、また違う感想になるかもしれないけど)

 

 いずれにせよ、こういう技法に特徴がある絵は似たものを描くと似てるなーという感想にしかならないので、ラクガキ的な絵を描けば、サイトゥオンブリーみたいだなーとなるような作家ではある。なので、唯一無二といえば、唯一無二で、似たような作品は今後も出続けるだろうけども、美術の世界、先にやったもん勝ちみたいな所もなくもなく、この路線は、ある意味ではデッドエンドしてるのかも。ポロックとかバーネットニューマンの路線がそうであるように。 

 

 とはいえ、展覧会の最後の部屋を抜けたその先に奈良美智さんのドローイングルームがあるのだけど、こちらは常設なので、たまたまな部分もあるんだろうけど、この構成も面白かった。というのも、サイトゥオンブリーを見た後に奈良さんのドローイングを見ると、ん?そういえば、似た部分があるな。と思う所もあったから。こういう所に美術の世界の「更新」を感じる。

 

 作品年代的にも最後の部屋と奈良さんの部屋にあるものはそんなに違いはないはずで、そういう意味でも最後ちょっと対比的になってる所もこの展覧会の意外な面白さではありました。

 

 

ナショナルギャラリー 英国の至宝

 

 美術好きは必見  ☆☆☆

 

www.cetera.co.jp

 

 大変おもしろいというか、興味深い作品だった。

 

 と言っても、美術好きじゃない人は見てる間、苦痛でしかなく耐えられないかもしれない。美術好きでも苦痛なところはある。

 

 この作品は、時間が3時間程の長いドキュメンタリーで、基本的には「おもしろい」作品ではない。ベースとしては、しんどさがある。単調だ。しかし、それを上回る「おもしろさ」もまたある。美術好きとしては、美術の理解を深めるのにこれほど適した映像は今まで無かったとすら思ったし。それぐらい「おもしろかった」。

 

 この「おもしろさ」は評論的な本を読む楽しみにも似ている。字幕を読んでるので、文字通り、学芸員の解説というかたちで「評論」も読んでるのだが、そのクオリティが高いので、それだけでも面白い。ケネスクラークの「絵画の見方」とか、中野京子の「怖い絵」などが好きなような人間には必見だろう。ただ、映画の場合、時間が縛られる分、本より苦痛がちょっと大きいかもしれない。見るのを止められないから。

 

 反面、映像があって、先に進むので頭には入りやすい。まあ、どちらの場合も、場合により眠くなる。寝不足で見ると、ちょっとつらいかも。

 

 内容は、ナショナルギャラリーの日常的な風景を「ただ」映してるだけの作品だ。文字通り「ただ映している」。劇中、登場人物の主張は激しいが、撮ってる作家の主張は、驚く程、感じられない。感じるのは「ナショナルギャラリー」と「美術」。こういう映像はありそうであまり無い。大体の映像は、余計な解説やコメントが入ってしまうし。情報が過剰だ。特にテレビドキュメンタリーなどは、そういうものが多い。

 

 その意味で、これは一方で実に「映画らしさ」を感じる。テレビだとチャンネル変えそうだし。DVDなら途中で止めそうだが、映画なら、とりあえず席を立たずに見る。

 

 個人的にかもしれないが、こういうタイム感、時間が重要な役割を持つ映像には「映画」を感じてしまう。なので、美術好きじゃなくても、映画好きなら、OKな作品かもしれない。

 

 いずれにしても、この映画にただただ美術好きの自分は興奮し、ただ、そこにあるものがそこにあるものとして映され、「美術」の知識が大幅に深まった。そこに「説明」はなくとも、いままで本で得たような知識が体感的に分かった。

 

 この映画は、ただ流れるだけで美術についてのエトセトラが頭に入りやすく、大変、為になる。観客の視線、職員の視線、絵画そのもの、各種イベント、そして、館長や学芸員の視線のコントラストが大変あざやかに「ART」というものは、こういうものだという事を包括的に訴えてくる。それも押しつけでなく。確固としたかたちで。

 

 「時間が長い」という事もこの理解の一助になっているのだろう。終わったあとは、もうちょっと見たい。聞きたい。知りたいという欲もあったが、流石にお尻もいたいので、ようやく解放されたという気持ちもあった。3時間、大体そんな感じかなというのもあって、この長さで丁度良い気もする。かなり長い気も一方ではするけど。。。

 

 それにしても、これは「美術」を探る上で、非常に価値の高い映画だ。まあ、ナショナルギャラリーの貴重映像だから当たり前なのだけど、大画面に映る絵の数々も楽しいし。行った事ない場所に「ちょっと」行った気になれる。日本の地方にいて、そんなに満足に「良い絵」を見られない美術好きとしては、こういう時間はより貴重な時間として感じられた。断片しか無いからこそ、「より」知りたいと欲求する。そんな感じもあった。

 

ベイマックス


 超絶的におもしろい  ☆☆☆☆


 あんまり、そそらない題材ではあったが、見たら、やたら面白かった。技術力が凄すぎる。最近、インターステラー、ゴーンガール、ベイマックスと見たのが当たり続きなので嬉しい。


 こういうラセターのような才能をトップに冠しながらも、基本、チーム戦で構築的に一つの作品を作って行く今のネットワークを媒介とした美術のあり方みたいなのが、今のハリウッドにフィットしているのだろう。と見て思った。


 日本だとジャニーズやAKB、エグザイルとか、音楽がそのような様式になっているけど、アメリカでは、ハリウッドに才能が集結してる感じ。


 それにしても、チーム戦になると分かりやすいアイコンも必要であるし。続編が増えるわけだけど、こういう新たなメジャータイトル(アイコン)になりそうなものに出会うと嬉しい。続きも楽しみ(そして、3作目ぐらいやると飽きそうだが)

 

 しかし、最近、ハリウッドで日本的意匠が流行りなのかな。日本人が主人公だし。結構、援用も多かった印象。そういえば、トランスフォーマーも元を正せばそうであるから、かつて、子ども向けアニメが世界に流れた事によって、世界的にそういうものに馴染みがあるという事か。

 

 

長谷川等伯「松林図屏風」

 

 東京国立博物館

 

 

 めちゃくちゃ凄い ☆☆☆☆☆

 

 

 新春公開という事で、見て来た。近づくと筆致が荒く、遠目で見ると静謐。草稿との話もあるが、抽象表現主義などを通った現代の目で見ると、ほとんど完璧な一作。

 

 昔の作品なので、偶然の産物な可能性もあるような気がするが、それも含めて、凄いの一言。今まで見た日本の美術の中でもトップクラスかも。(ほか、自分が見た中で、これはワールドクラスだなと思った日本の絵としては、小磯良平「斉唱」などがある。<無論、これは個人の好みやタイミングにもよる。松本竣介香月泰男川端実など、(ある時期の)概ねの作品が好きな作家もいるが、これは逆に作家主義的な好みだろうと思う。)

 

 久々のメモでした。(前が花子とアンとか・・・マッサンも見ております。)

 

花子とアン

http://www.nhk.or.jp/hanako/

 

思いのほか面白い  ☆☆☆

 

 

あまごちが面白かったので、その疲れもあり、そんなに期待せず、最初の方は見てなかったのだけど、ふとした拍子に再放送を見たら、一発でハマった。

 

 

描写も丁寧だし。画面も好きな感じで(田舎のシーンはちょっと板についてないというか違和感があるけど)、演技も好感が持てる。

 

 

最近は、こういう勉強して立身出世するような話に弱い面もあるかもしれない。

 

 

勉強して人生が変わるのは今もそうなんだけど、今の時代でそういう話をしたら、あんまりリアリティ無いだろうし。こういう事がある所が昔は夢があったみたいに語られる主要な部分なのだろうなーと思いつつ、見てる。もっとも、主人公を通さず、冷静に見ると、階層差が今の比じゃないくらい固定されてて、あんまり夢のない時代なんだけども(だからこそ夢が際立つというか)。

 

 

「アナと雪の女王」

 

http://ugc.disney.co.jp/blog/movie/category/anayuki

 

 

 見た。凄かった。  ☆☆☆

 

 

 とにかく凄い映像だった。こないだの「ゼロ・グラビティ」もそうだが、最近のハリウッド映画はまた一つ何かの技術が上がったのかなという感じもしなくもない。なんか見てて、凄いなっていう感じがあった。

 

 

 アナのキャラクターの作り込みも凄い。ホントに生きてるみたいというか、アニメで再現するには凄いキャラクター設定だと思った。

 

 

 音楽も良い。ミュージカル仕立てだが、曲が楽しいので、見ていて楽しい部分もある。自分は吹き替えで見たので、最初ちょっと違和感を感じたが、しかし、主役の神田沙也加も思いのほか巧かった。最初は普通に声優さんがやってるものだと思って見てた。

 

 

 ストーリーも面白く、全体的に良い映画だった。