レビューとメモ

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格闘マンガの変遷に関するメモ

 

 前回、羅列したヒーローものの中に「タイガーマスク」が無かったなとふと思い出した。というわけで、前回の記事にひっそり後から入れておいたのだが、ついでなので今回は格闘マンガについて書く。メモ的に。


 ジャンプの初期バトル漫画の「リンかけ」「キン肉マン」が格闘技モデルというのは書いたが、その前段には「タイガーマスク」がある。というように、格闘技とヒーローものには一定の相関があるように思う。「ドラゴンボール」も最初の頃は武道がモチーフだし。「北斗の拳」も拳法をめぐる話ではある。


 とはいえ、格闘マンガと言って、すぐに思いつく代名詞は「グラップラー刃牙 」(1991年)となるはずだ。皮肉にも、90年代に入って、格闘技が総合格闘技の世界に入ってから、「バトルもの」と「格闘もの」が明確に袂を分かったように思う。これは総合のレベルが上がった結果、意外と異種格闘技戦みたいなものが成り立たなくて、競技としてリアルになったからという理由もあるだろう。あと、「バスタード」や「ダイの大冒険」のように剣と魔法の世界が少年漫画の世界に浸透していったのも逆の面からの一要因かもしれない。


 ここで少し格闘漫画の類型を見てみる。格闘漫画は大まかに「プロレス型」「競技型」「立ち技型」に分かれるのではないか。それぞれの代表作は「タイガーマスク」「あしたのジョー」「空手バカ一代」と全て梶原一騎の作品になると言っても過言ではない。「プロレス型」はタイガーマスク(現実の方も含む)に代表されるようにヒーローの類型を使っているが、「競技型」はリアルな競技として描かれてるのが特徴だ。これが総合の世界になると「修羅の門」や「グラップラー刃牙」のように漫画的な大仰さもありつつ、競技型の体裁を保つものが主流になっていくように感じる。


 「立ち技型」は大まかに空手と拳法に分かれ、拳法の方はブルース・リージャッキー・チェンの映画の影響の方が大きいだろうが、ちなみに90年代前後は「コータローまかりとおる!」「鉄拳チンミ」「拳児」など拳法系のマンガも結構、流行っていた記憶がある。この辺りは、相撲漫画もまあまあ多かった記憶があるので、ある種、格闘マンガブームだったのかもしれない。


 その頃、現実の世界も若干、格闘技が流行りつつあった記憶がある。プロレスも90年代初期あたりは全日もストロングスタイルで、ちょっと総合格闘技っぽくなっていた面もあったような。一応、スタン・ハンセンとかはヒールっぽい流れなのかもしれないが、三沢と戦ってた頃には、もはや全くと言って良いほど、ヒール感は無かったかもしれない。少なくとも、自分はそう見ていた。新日はライガーが出てきたり、ちょっとまだヒーローっぽい装いがあったのかなとは思うが。


 ジャンプに関して言うと、「闘え!拉麺男」「北斗の拳」と拳法ものに一定の需要がある事を示したのちに初期「ドラゴンボール」の武道も、その類型から始まってるのではないか。北斗神拳は表現的にはペガサス流星拳などに受け継がれてるような気はするが、ドラゴンボールが作中で表現を諸々アップデートして、かめはめ波超サイヤ人に至り、そのあとの「幽遊白書」になるとドラゴンボール的な方向を受け継いでいるのだろう(急に主人公の非人間の出自が明かされてパワーアップの根拠にするような)。そして、そこから「ジョジョ」のスタンドを経て、「ONE PIECE」や「HUNTER×HUNTER」のような異能バトルに至るのが流れか。ヒロアカもこの流れを継承しているが、鬼滅は先祖帰りして、車田的なバトル描写に近くなっている気はしないでもない。まあ、これも「るろうに剣心」や「ブリーチ」のような剣術物の流れの方が強いのかもしれないが、それも元を辿れば「風魔の小次郎」に当たるからな。


 90年代の直前1987年開始の「修羅の門 」は正に空手、拳法の立ち技から総合格闘技へ至る展開をやっているが、途中、メジャーなボクシングを挟むところで、ぎりぎりリアル寄りの範疇でボクシングを異種格闘技的に取り入れている。これを見ると、ボクシングも立ち技なので立ち技の類型に入りそうな気がするが、現実の世界では、ほとんどボクサーは総合のリングに上がってこなかったし。相撲もそうで、曙とかはいたけど、現役が他で出ることはなく、その強さの神秘性が保たれ、ボクシング最強説とか、相撲最強説とかも、よく言われていた記憶がある。


 ボクシング自体、意外とヒーローもののモチーフにはならなかった気もしていて、パッと考えると、島本和彦の「仮面ボクサー」(1988)はあるけれど、一応、あれもギャグ的だし。ヒーローものとは言い難いところではある。言うまでもなく、その後、ボクシングは「はじめの一歩」が大ヒットを飛ばし、やはり、ボクシングは、メジャー競技すぎるので、その競技性の範疇での物語の方がリアリティがあるのではないか。「リンかけ」のようにボクシングの範疇でバトルものをやる体裁というのはあるにせよ(これはのちに「テニスの王子様」で似たような事をやっている方法と言えるだろうが、ボクシングで再びやると「リンかけ」では?と言われてしまうとは思う)


 というように格闘マンガは時代性があるというか、現実の格闘技とリンクしてるので、結構、語るのが難しい。とりあえず薄い知識で思い出すと現実の日本の総合格闘技の歴史で重要なのはこのへんか。


 UWF 1984
 シュート 1989
 リングス 1991
 パンクラス 1993
 K-1 1993
 PRIDE 1997


 ちなみにシュートは初代タイガーマスク佐山聡によるもので、プロレスから続く流れが連綿として感じられる。こうして振り返ると、90年代は総合格闘技の黎明期、総合が本格に流行ったのはプライドが本格化した0年代以降みたいな感じか。


 0年代以降のバトル漫画は結構この流行の影響を受けているのではないかと思われる。具体的に何処というのは、パッと思いつかないけど、まず現実の喧嘩にしてしまうと結局、総合が強いみたいな話になってしまうので、単純な殴り合いが難しくなったように感じる。多分、マーシャルアーツをやってる主人公やその味方が増えているのではないか。そして、この頃にはゲーム経由のファンタジーバトル要素も加わって、ドラゴンボールの時代と比べても、現実の修行とかを無視した異能バトルが主流になっていくのだろう。こうしてバトルものが格闘技からかけ離れ、逆に昔のアメリカンヒーロー(スーパーマンとか)が近づいた部分はあるように思う。「リンかけ」や「キン肉マン」「北斗の拳」から、ぎりぎり「聖闘士星矢」ぐらいまでは現実に真似やすい技のリアルさがまだあったかなとは思うが、「かめはめ波」からは無理かなと言う感じがする(真似るけど)


 いずれにしても、日本のヒーローといえば、プロレスとは切り離せない所があり、それに類する格闘技も結構、影響が大きいのでは?とふと思いついたので、メモ的に。と思ったら、長くなってしまった。


 あと、これを書いてたら、途中で妖怪ものも結構大きなジャンルだなと思った。まあ、最近、ジャンプが妖怪物だらけなのもあるが。鬼太郎もそういえば、前回、羅列してなかったなと思い出した。